ふわふわオムライス

愛の深淵をのぞく

劇団プレステージ第12回本公演 『URA!URA!Booost』観劇。

劇団プレステージ第12回本公演『URA!URA!Booost』@紀伊國屋サザンシアター

8/25ソワレ、8/26マチネ・ソワレの3公演を観劇しました。

 

「応援」をテーマにしたこの作品。

応援、というと私にとってはごく身近なもので。プロ野球の贔屓チーム、好きなバンドや俳優など、私はこれまで様々な人を様々な場所で応援してきました。

だれかを応援する日常は私の中で当たり前のものとなっていて、応援する行為に生き甲斐を感じています。決して誇張ではなく。

しかし、ふとこう思うときがあります。「結局のところ応援って自らのエゴにすぎないのではないだろうか?」と。

最近ネットで話題となったとある議員の方のツイートにも似たような内容がありました。他人に自分の人生を委ねて、自分が何かをやった気になっている… そんなことはない!と言いたかったけれど、自分自身でも心のどこかでそう思っていたのかもしれない。私はなにも成し遂げていないのに、ただの自己満足で他人を応援しているだけだ…他人に応援というエゴを押し付けているのではないか、と。否定できずにいる自分がもどかしかったです。

今回の舞台は、自分が抱えていたそんなもやもやを払拭してくれたような気がしています。

 

以下公演内容を含む感想です。

 

関東平野のど真ん中…北越谷大学第12期応援団の応援シーンより始まります。

 

ひときわ目に付いたのが、株元さん演じるタケノリ。きっと重いだろう旗を持ちながら微動だにせず、すごく凛々しかったです。

そして何よりも、応援団員の声量に鳥肌が立ちました。心の奥底からふつふつと湧き上がるような何とも形容し難い興奮を覚えました。ただひたすらに、すごい。

とくに26日はマチネソワレ両公演行われたにもかかわらず、喉を潰している素振りもなく全員が大きな声を出していました。

 

冒頭の応援シーンは今井さん演じる主人公・テツオの回想シーンです。

「そんなダイスケが、死んだ。」

テツオが淡々とこの言葉を口にすると、舞台は暗転し葬儀場へと変わります。

 

葬儀場では既に故人となったダイスケが喋ります(後述)。テツオの心の中にいる、と自称するダイスケとテツオの会話で出てくる「約束」。

この約束が物語の鍵を握ります。

 

実はテツオ、職場を首になり、婚約相手にも見放されたばかりでした。何もかもを失ってしまい、生きることに疲れた状態でした。

 

続いて、病室にてテツオとダイスケが話すシーンへ。

26日のソワレでは、ダイスケの優しげな目がとりわけ印象に残っています。ソワレ公演で初めて上手側から観劇できたため、テツオとダイスケの表情をじっくりと見ることができました。

大村さん演じる北越谷大学第12期副団長・ユタカのキャラが私は大好きで…!そこはかとない魅力を感じました。

風間さんはやはり役作りのための髭だったのですね…、髭のある風間さんは新鮮に映りました。

 

いつしか再び回想シーンへ戻り、私たちは第12期応援団の1年生〜4年生時代の様子を垣間見ることになります。

このあたり、ほんとうに涙が出るくらい笑いました…!日替わりシーンやアドリブも交えられていて、観劇するたびに内容が違っており非常に面白かったです。

ライバル校・南越谷大学との決闘(?)の場面では、小池さん演じる南越谷大学応援団長のパネルを団員全員が持っていて…(文章だと非常に伝えにくい、笑)初めて見た時は思わず動揺しました。

 

また、特筆すべきは北越谷大学女子チアリーディング部!劇団員のみで構成されている舞台なので当然ながら女性役も男性が演じるのですが、このチアリーディング部…

「ひどい!」と城築さん演じるソウタの言うように、応援団からの評価は散々です。

それはさておき、チア全員脇の毛も綺麗に剃られていてドキドキしました!チアダンスも一糸乱れぬ動きで…ところで石原くんのチア衣装のトップス、すこし丈が短かったように感じられたのですが…笑

 

大学4年に進級するにあたって、先代団長より直々に第12代団長に指名されたダイスケ。

ここで問題が生じます。

団長目指してこれまで必死にやってきたユタカが、なぜ自分じゃなくてダイスケが団長なんだ、と嘆きます。

そこで、ユタカに団長の座を譲っても良い、と言うダイスケ。

太田くん演じる、空気のような存在だった部員・サトシの言葉により、12期はこの問題を乗り越えます。

サトシ、良いキャラしてる…!

 

回想シーンは幕を閉じ、葬儀場でのダイスケとテツオの対話へ。

テツオはダイスケに誘われて応援団に入ったのは事実だけれど、ダイスケが応援の道を志すようになったのは高校時代のテツオがいたからだということ。

約束の内容がはっきりと分かったこと。

「応援」するとはどういうことなのかということ。

さまざまな内容がここで明かされます。

 

自己満足でも、自画自賛でも、良い。

応援ってなんなんだ、なんのために他人ばかり応援してきたんだ、自分にはなにも残らなかった。職と婚約相手を失い、半ば自暴自棄になっていたテツオは、これまでの自分を否定していました。

「他人を応援することで、自分を奮い立たせる」

意味のない応援なんて決して無い。ダイスケのこの言葉がすごく印象に残っています。

 

ところでスタンドから部員を応援する高校時代のテツオを石原くんが演じていたことに気づいたのは失敬ながら3公演目でです…、もしDVDが発売されたならじっくりと観たいな。

 

いよいよ告別式。渉外担当のコウイチロウの連絡網により、12期部員、南越谷大学の応援団長、そして歴代団長の山崎・杉下・広瀬先輩がダイスケのもとへ集まります。

サトシやテツオが「ダイスケがみんなを集めてくれた」という台詞を口にするのですが、

ここで私はようやく、「あっ、ダイスケってもうこの世にいないんだ」と、彼の死をはっきりと感じ取りました。

葬儀場、遺影、棺。死を連想させるものが多く登場するにもかかわらず、不思議と作中に死のイメージは付きまとわず、それどころかある種の爽やかささえ感じられました。

人型に穴を開けた遺影に猪塚さんが顔をはめて話したり、今井さんの数珠が切れたり(どうやらこれは25日のハプニングだったようですが…)など、「死」をできる限り恐怖感を取り除き、コミカルなものに描こうという工夫が感じ取られました。コミカルというと語弊があるかもしれませんが、通夜のシーンで客席から度々笑いが起こったのはかなりシュールな光景だったのではないでしょうか…

 

結局のところ、テツオは職を失ったままだし、婚約相手にも見捨てられたまま。彼は自分自身の現状の打破には至っていません。

けれど彼の心の中にはダイスケがいて。彼の想いを、団旗を部員全員で持ったように残された12期団員ひとりひとりが背負い、テツオはもがきつつもこれからの人生を必死に歩んでいくのではないか、と私は思います。

 

ひとまずここまで。追記したい…