大阪城ホールのステージで挨拶をしていた彼は、大きな瞳をギラギラさせて、力強くそう言った。
あの時の姿には「キラキラ」じゃなくて、「ギラギラ」の擬音語が似合う。あたかも、瞳の奥にめらめらと燃え滾らせた闘志が透けて見えるかのようだった。
わたしは「絶対」も「永遠」も「一生」も無いと思っている。
それが好きな人たちから告げられた、嘘偽りのない言葉であったとしても。
この世に星の数ほど存在するエンターテインメント、なんだって有限。ずっと続く保証なんてどこにもない。
ともすれば、いま応援している人も、1年後は表舞台から去っているかもしれない。
どれだけその日が来ないことを願ったって、いつか必ず「終わり」は訪れるのだと、心をゆるやかに蝕んでくる諦念を拭いきれない。
そういうの頭の片隅に置いて応援するのもなんだか悲しいよな、好きな人たちはこんなに頑張っているのに悪いよな、とはやっぱり思う。
でも思いもよらぬ別れに直面したときに深く傷つきたくないし、あのときもっとああしておけばよかった、って後悔したくない。自己防衛のためにわたしがとった選択なので、仕方ないのかな。
応援する側だってそうだ。
自分も、今でこそ精神的にも金銭的にも余裕があって、家族親戚もみんな元気だし、趣味を楽しめる環境は万全に整っている。
けれど、いつどこでその基盤が揺らぐかは分からない。
願わくばずっと好きなものとひとを追いかけ続ける人生を送っていたいけど、いざ現実に向き合うとそういうわけにもいかないんだろうな…とはぼんやり考えている。
話を大阪城ホールでの挨拶に戻す。
「なにわ男子で絶対デビューします。一生ついてきてください」
「一生、一生ついて来いよ!」
自分の想いと夢を、彼はわたしたちファンに何度も何度も口にしてくれた。流石グループ最年長、凄く頼もしいな。と思う反面、ちょっと怖さを覚えた。
なんでこの人は「一生」ってこんなにも口に出せるんだろう…って。わたし自身が「一生」を信じられないせいで、尚更そう思ってしまった。
口にするのはものすごく簡単。たった一言で、一瞬にしてたくさんのファンを魅了できるかもしれない魔法の言葉。そのぶん、なにかの手違いでボタンを掛け違えちゃって、魔法がするすると解けたときの反動も大きいだろう。
だからこそ、簡単に口にすべきでない言葉だと思ってしまう。…かく言うわたしも現場終わりは「無理…一生好き…」などと譫言のように口にしているのだけれど…特大ブーメラン…。
でも、考えてみればきっと彼は「一生」の言葉の重みをものすごく理解した上で、あの場でそう言ってくれたんじゃないかな。
わたしは彼の、現在進行形で約16年以上にも渡るアイドル人生の極々一部しか知らない。
オムライスで例えるならかかっているケチャップを指先でほんの少しすくって舐めた程度、しか。
(全国レギュラーコーナー持ってない分際で例え話持ち出してごめんね)
彼のことを知った去年の夏、なにわ男子としては観覧車のアンバサダーとか24時間テレビのスペシャルサポーターとか、大きな仕事があって。加えてテレビに雑誌にラジオ、などなど。一度には追いかけきれないくらい沢山の供給を得たわたしは、きっと彼は順風満帆なアイドル人生を歩んでいるんだろうな…と思っていた。
だからこそ、過去を知るたびに驚く。
芸能活動を続けるか悩み、普通の大学生と同じように就活をしていた頃。会見では決まって三列目に立っていた頃。
どれもこれも、にわかには信じがたい話だった。だって、歌もダンスも高いレベルでこなすし、トークスキルも抜群だし、漫才だってできちゃうし…魅力に溢れている芸達者な彼が、どうして?脳内に疑問符しか浮かばなかった。
無くなってしまったグループ、夢半ばでジャニーズの世界から去っていった仲間たち。
彼のジャニーズ人生のなかで、見たくないものもたくさん見てきただろうし、辛いことなんて、楽しかったこと以上に経験してきただろうな。
それゆえ彼は「一生」がどれだけ不確かなものかなんて、身をもって分かっているはず。にもかかわらず、わたしたちにそう言って、優しく手を差し伸べてくれる。
なにわ男子のメンバーとして活動していくこと、そしてジャニーズ事務所のアイドルとして生きていくこと。彼自身のこれからを見据えて、全てを包括した、並々ならぬ覚悟あっての「一生ついてきてください」だったと思っている。
これからなにが起きようと、彼のことを信じてついていけば大丈夫な気がする、ってわたしは思った。やっぱり彼はファンの誰一人置いてけぼりにせず、しっかりと手を握って離さずにいてくれるひとだ。
大好きな人の「一生ついてきてください」に対して、「一生ついていきます」って約束すること、いまのわたしにはできなくって、申し訳ないな。
それでも、これからもわたしなりに精一杯、夢に向かって突き進むあなたのことを応援していきたい。今日も明日も明後日も、その先も、勝手ながら大好きでいさせてください。